「さっちゃんっ、さっちゃん待って…!」

走っていくさっちゃんを呼んで、必死に背中を追いかける。教室のある棟に繋がる渡り廊下の方へ、とにかく足を動かして全速力で。

「待ってよさっちゃんっ」

息を切らして、だんっと大きく一歩踏み出した。

「さっちゃん…!」

後ろから抱き着くみたいに、渡り廊下の真ん中でさっちゃんの背中からぎゅっと飛び込んだ。

「!」

「…っ」

さっちゃんの背中に顔を埋めて、もうこれ以上どこにも行かないように掴んださっちゃんの制服をぎゅーっと握る。

絶対離さないって、グッと引くように力を入れたからさっちゃんの足が止まった。

「あゆむん…、ボク男の子だからこれはちょっと…」

「うわぁぁぁっ、ごめんね!ごめんね!?」

離さないつもりだったけどそれを言われたら急に恥ずかしくなって手を離すしかなかった。


そ、そうだ…!

いつもスカートを履いたさっちゃんだったからつい女の子感覚で抱き着いちゃった!


でも、違うんだ!


さっちゃんは…


「女の子だよ、さっちゃんは」


目を見る、しっかり見てほしくて。

真っ直ぐ見つめた。

「あゆむん…」

だけど、さっちゃんが視線を落とした。

「…ボク男の子だよ」

「さっちゃんっ、いいんだよ!だってさっちゃんはっ」


「違うんだ!!」


下を向いたさっちゃんが大きな声で叫んだ。外にある渡り廊下はどこにも響くことなく声が抜けていく。

「ボクは男の子なんだ、女の子になりたいわけじゃないんだ…」

「え…」

ぎゅっとグーにした手が震えてる、きっとめいっぱい力を入れている。