「ねぇ智成くんは…どうしてこの寮に住んでるの?男子寮は部屋空いてるんだよね?」

でんちゃんの言い方だとそんな感じだった。

でも3人もここに住んでる、みんなそれぞれ事情を抱えてたりするのかな。

あ、だったら聞かない方がよかったかも…

「同居人にうるさいって追い出されてん!」

「……え?」

「オレ声でかいやろー?眠られへんって追い出されたん!」

めっちゃケラケラ笑いながら教えてくれた。

へぇ…そんなパターンもあるんだ。

「オレ出身大阪やからなー、しゃーないよなぁー」

「う、うん…」

しゃーないのかなぁ?
そうゆうことはよくわからないけど…

うるさいって追い出された人がいる寮ってどうなの?

大丈夫なのかな、この寮…

「あー!新しい子〜?」

甲高い声が廊下に響いた。

声のした方を向くとTシャツぶかぶかのカーディガンを羽織ってミニスカートを履いた…


女の子?


「嬉しい~!仲間が増えるんだ♡」

駆け寄って来るとぎゅっと私の手を両手で握った。

「初めまして〜!」

くるっと上げられたまつ毛にぽってりと淡いピンクに染まった唇、肩まで真っ直ぐ伸びた真っ黒な髪がコントラストになるくらい際立つ肌の白さ… 


女の子?いるじゃん!

私よりちょっと背の高い、可愛い女の子いるじゃん!!?


でんちゃん…

私のこともテキトーだったもんね、本当何が正しくて何が間違ってるのかわからない情報ばっかりじゃん。

「ねぇねぇ名前は?何年何組?」

「2年1組三森歩夢です…っ」

「あ、隣のクラスだ♡」

ぎゅぅと握る強さはちょっと強いけど、女の子がいてよかった!

やっぱ男の子の中に女子1人は心細かったの…!

「あゆむんね!咲月(さつき)って言うの、さっちゃんって呼んでね!仲良くしよ!」

「うん、さっ」

壮太郎(そうたろう)

私の声を掻き消すようにスッと智成くんが言い放った誰かの名前…


え、誰の名前?


「智成!その名前で呼ばないで、可愛くないから!」


え…?

えぇぇぇぇぇぇっ!!!?


さっちゃんって呼ぼうとしたままフリーズしちゃったから、口が開いたままになっちゃった。

つーんっと顔をそむけ眉をつり上げたさっちゃん…?


「男やで、咲月壮太郎(さつきそうたろう)れっきとした男やで」


男ぉーーーーーーーーー!!?

かわっ、可愛い…!!!


離された手から、力の強さは感じてたけど可愛い…!

「壮太郎は男子寮が嫌でここに来てんな」

「だって男子ばっかでむさ苦しいんだもーん!」

「そら男子寮やからな!」

「ここ1人部屋だし、1階は空き部屋ばっかだし、まだマシかなって」


………へぇ。

そんなパターンもあるんだね?


なんか想像してた理由は誰も持ち合わせてないみたいなんだけど…

へぇ。

「あ、そうや。1階に洗濯室と食堂があんねんけど、いつもは学校の食堂やからキッチン使うにはでんちゃんの許可がいるでな。夜はでんちゃんが管理室おるから安心やで」

「基本寝てるけどね」

「夜はみんな寝るもんやねん」

聞けば聞くほど不安になる。


本当に大丈夫なのここ、私こんなところに住んでいいの…?


「他わかんないことあったら聞いてね、あゆむん!」


全然大丈夫な気がしなぁーーーーーい!!!