席に着くのが遅くなっちゃって、真ん中のテーブルしか空いてなかった。

周りから目立つけど…
しょうがないね、ここしか空いてないしね。

今日の夕食メニューはグラタンとサラダ、めっちゃいい匂いがほわほわしてる。

それとデザートに…

「リンゴゼリー嬉しいね!」

たまーに付くのがまた嬉しい、早く食べたいなぁ。

「あゆむんリンゴゼリー好きなの?」

「うん、ゼリーが好き!リンゴじゃなくてもゼリーならなんでも!さっちゃんは?好きじゃないの?」

「うーん、好きだけど…ボクはプリン派かな」

「それもいい!」

さっちゃんと向き合って、まだ温かいグラタンを頬張った。

とろとろでおいしい~!
学食っていろんなもの出るんだな~

「おいしいね、今日のグラタンは当たりだよね!」

「うん」

「いつでも当たりだけど」

「…おいしいね」

さっきまで表情をこわばらせていたさっちゃんが微かに微笑んだ気がした。ひとくちグラタンを口に入れて、うんって笑った気がしたの。

「ねぇ、さっちゃ…」

「うっわ、変質女(へんしつじょ)じゃん!」


……え?今、なんて…?


一瞬微笑んださっちゃんからすーっと表情が消えた。

スプーンを持つ手にも力がなくなって、テーブルにぽてっと置かれてるだけになった。


たった一言だった、一言だけ聞こえた。


でもさっちゃんを傷付けるには十分な一言過ぎる。悪意のある言葉なことは私にでもわかったから。

「ごめんあゆむん、ボクもうお腹いっぱいだから」

笑いたくない顔で笑って、まだ半分も食べてないグラタンをおぼんごと持って立ち上がった。

「さっちゃん…っ!」

下を向いたまま返却口まで、食べかけのグラタンを置いて食堂から出て行く。

私もすぐに立ち上がってさっちゃんを追いかけた。