「ただの女好きじゃん」

「アホ言え!優しさの塊や!」

「女の子みんなにいい顔したいだけじゃん!ねぇあゆむん!?」

「えっ」

聞くだけ聞いて掃除をしていたのに急に話を振られたから、2人に注目されて何か言わざる得なくなった。

「えー…でもそれって悪いことじゃないよね?」

だから素直に思ったことを答えてみた。

「いいことじゃない?みんなに優しくってなかなかできないと思うから…」

みんなに分け隔てなくって案外難しい、それができるのはすごいと思う。

「智成くんのいいところだね!」

優しくされて嫌な子はいないし、みんな嬉しいと思うから。

「歩夢ちゃん、歩夢ちゃんのためならいつでも歌とたるで」

「!」

ぐいっと近付いて私の肩に手を回した。

え、近い…っ

「あゆむんから離れろ!」

「いってッ」

ドンッ、と持っていたブラシでさっちゃんが小突いた。
たぶんそんなに力が入ってたわけじゃないんだけど、掃除してないプールはとにかく滑りやすいから…

「うわっ」

つるっと足を滑らせ、背中から転んでいた。バシャッて少ししか張ってない水がしぶきを上げて。

「智成バカじゃん♡」

「お前がやったんやろ!」

「智成くん大丈夫!?」

「どーしよ歩夢ちゃん、とりあえず見て空が曇って来てるで」

「ほんとだ!?え、雨降る!?」

水の張ったプールに寝ころんだまま上を指差す智成くんは全身びしょびしょなのに冷静に空を見てて。
急にアンニュイな雰囲気を漂わせた智成くん…を斗空がブラシで一掃した。

「いてっ」

腰辺りをぎゅんってブラシで、おかげで智成くんに水がかかってさらに濡れてた。

「早く掃除するぞ、雨降って来る前にな」

「やっぱ今日雨なんだ!?掃除の意味なくない!?」

「あゆむん早く終わらせて帰って遊ぼ~!」

「おい!オレの周りだけしてどーすんねん!めっちゃ水かかってるやん!!」

プール掃除なんてみんなめんどくさくてやりたくないかもしれないけど、楽しかった。


みんなで笑って、楽しかったんだ。


気付いたら私もびしょびしょで、それでも笑ってた。



みんながいてくれたから。