「…って思ってたんだけどなー」

張り切ってジャージに着替えてプールにやって来た授業後。


私しかいなかった。


一緒にしよって言ってたのに。



私だけしか…



「そーゆうことか…」


はぁっと嫌にでも息が漏れちゃう。

最初からそーゆうことだったんだよね。

プール掃除を誘ってくれたわけじゃない。


私を1人にさせたかっただけ。


そうだよね、浮かれちゃったけどクレープとプールじゃ全然違うもんね。

誰もやりたがらないものをわざわざ誘うなんて…

「あるわけないよね」


失敗しちゃった。

間違えちゃった。


そっか、そうなんだ。


「困っちゃたなぁ…」


せっかくいい天気なのに、もやもや雲がかかったみたいな私の心は今にも雨が降りそうで。

もう我慢できないかもしれない。


瞬きしないようにって思ってたのに、1回でも瞬きをしたらこぼれ落ちちゃうからって…


でも瞬きなんかしなくても、もう止められそうにないー…



「歩夢」



ぽろっと1滴涙がコンクリートの地面に落ちた。

「掃除するのにブラシも持たないで何してるんだよ」

「斗空…」

プールサイド、水の入っていないプールから視線を変えて振り返った。

「智成くん、さっちゃんも…」

ジャージに着替えた3人がいた。
ブラシとバケツと、掃除に使う道具を持って。

「みんな…」

安心しちゃったみんなの顔見たら、そしたらもっと涙腺はゆるんで。

「歩夢…お前、嫌われてたんだな」

「はっ!?」

え、すっごいひどくない?
それ本人前にして言う?

めちゃくちゃ傷付いてる本人の前で!?

涙引っ込んだんたけど!

「ほぼ斗空くんのせいやけどな〜」

「なんでだ?俺は何もしてない」

「イケメンは自覚ないから困んねんな~!」

「とあぴ、あゆむんに謝りなよねー」

「何をだよ、何も謝ることなんかない!」


なんか…


もうすっかりいつものペースで、本当に引っ込んだままの涙はどっかいっちゃったかもしれない。

いつものみんなと一緒だから、もういいかなって涙が消えていったみたい。


頬に残った涙の跡を拭いた。