それから教室では誰も話してくれなかった。
目は合わせてくれないし、声をかけても聞いてもらえないし…



1人になっちゃった。



「歩夢、これ運んで」

「………はい」

本当だったらクレープ屋さんに行くはずだった今日、臨時寮の学食でのんきにお昼を食べてることになろうとは。
ううん、学校の食堂だと1人かもしれなかったから逆によかったかもしれない。

「歩夢?」

「…チャーハンとかオムライスかなって思ってたんだけど」

「?」

「こんなハイクオリティなカルボナーラが出てくると思わなかったんだけど」

しかも斗空の手作りの、これを知られたらまた何か言われちゃうんじゃないかな。

「思ってるより簡単だぞ」

「そんなわけないよ、カルボナーラだよ!?材料何がいるかもあんまわかってないよ!?」

「何度も負けてたらそれぐらい出来るようになるんだよ」

さすが無勝の異名を持つだけはある、てゆーか料理は上手くなるのにトランプは上手くならないんだ。

「早く運んでくれ、そのうち智成たちも来るから」

めっちゃくちゃいい匂いが充満してる食堂で斗空が盛り付けたカルボナーラを人数分机に置いた。あとはフォークとコップと、冷蔵庫からお茶も出しておこう。

「どうかしたのかよ、さっきからタメ息多いぞ」

無意識に出ちゃってたぽくて、エプロンを外した斗空に言われて気付いた。

「…なんにもないよ」

「あるだろ」

でも斗空に話せることじゃない。

「斗空ってみんなの斗空くんって呼ばれてるんだね」

「は?なんだそれ、いつのまにみんなのものになったんだよ」

煩わしそうに眉間にしわを寄せた。

「勝手に決めつけんな」

「そう?私はちょっと羨ましいけどなぁ、みんなのものなんてありがたいけど」

だって私に遠い言葉過ぎて、みんなの真ん中にいるみたいでいいなぁって。

「じゃあ歩夢にやるよ、それ」

「やるよでもらえるものでもないから」

斗空がふぅっと息を吐きながら、エプロンを畳んでイスの背もたれにかけた。

「別にみんなのものになる必要なんてないだろ、歩夢はみんなのものになってどうすんの?」

どうすんのって…それは…

「あ~!腹減ったなぁ~~~!」

「わ、いい匂い!とあぴ今日は何??」

全部の準備が整った頃、智成くんとさっちゃんが食堂に入って来た。

「カルボナーラ」

「わぁ~、最高♡めっちゃおいしそ~♡」

「斗空どんどん上手なってるよな」

用意された前のイスに座って、手を合わせる。

「歩夢!歩夢も早く来いよ、揃わないといただきます出来ないから」

…斗空ってそーゆうとこちゃんとしてるよね、いただきます出来ないって。

「あゆむん早く~!」

「あかん、めっちゃ腹減って来た!」

また何か言われちゃうかもしれないな、でも…ここなら誰にも見られないしいっか。

「うんっ」