自分の部屋に入って秒で戻って来た。じゃーんっと箱を前に出して箱を見せる。

「チョコパイ!」

賞味期限まだ先だし、お茶やもろもろのお礼にって持って来てみた。自分が食べたかったってのはもちろんあるんだけど、一応私も何か返したくて。

「はい、あげる!」

斗空の前にしゃがみ込んで、開けた箱からチョコパイを1つ渡した。


―バリバイバリィ…ッ


「きゃぁぁっ」


今までで1番大きな音が鳴った。

地響きみたいな音がして本当に落ちたんじゃないかって、つい体が保っていられなくて…


「「……。」」


斗空の胸に、抱き着くみたいに。
座っていた斗空に肩の上に手を乗せるように抱きしめて。


パチッと目が合っていた。


めちゃくちゃしっかり合っていた。


一瞬自分でも状況がよくわからなかった。


「わぁあっ、ごめん!違うの、あの…っ!」

慌てて離れたけどテンパって何を言ってるのか何を言えばいいのか…!


―バリバリバリィッ

「きゃぁっ」


次の言葉を言う前にカミナリの方が鳴ったから咄嗟に両手で耳を押さえた。少しでも音が聞こえにくくなるように、きゅーっと力強く抑えて耳を覆う。

そのせいで持ってたチョコパイの箱は中身が出て床に散らばっちゃった。

「……っ」

すごい音…
雨強すぎる。 

まだ強くなるのかな、もっとひどくなったりするのかな…っ

「歩夢」

耳を塞いでぎゅっと目をつぶって、なるべく小さくなるみたいに丸まってたから斗空の声が聞こえなかった。

右手に体温を感じた。

ゆっくり触れた斗空の手の体温が私の手を包む。

「歩夢」

そぉーっと目を開けるとじっと斗空が私を見てた。

包み込んだ手を握って私の耳から離した。

「手でも繋いでるか?」

「……。」

「そうするとなんとなく安心するだろ」

なっ、て微笑んできゅっと手を握った。


熱かった。

斗空に包まれた手が。


握り返すこともできなくて。


全然安心できないよ。



だってずっとドキドキしちゃってるもん。



心臓の音がまた鳴り出して、鼓動が早くなる。


手、大きいんだ。

私の右手がすっぽり隠れちゃってる。


斗空の前にぺたんと座って、俯く私の手をずっと繋いでいてくれた。


でも俯いてたのはカミナリが怖かったからじゃないよ、恥ずかしかったから。



斗空の体温で乱されてるみたいな自分が恥ずかしかったから。