「しまった、梅雨なの忘れてた…!」

週末の約束ができて浮かれてた学校帰り、下駄箱まで来て気付いた。

雨ザーザーだ。

朝は降ってなかったから傘持って来てないや、どうしよ~…

結構降ってるよね。

食堂はこっちだから夕飯にはまた学校来なきゃだけど、でもまだ夕飯まで2時間以上あるし暇だし1回帰りたい…

「走って帰ろうかな」

「無理だろ」


え?


何気なく呟いた私の一言に何の間もなく返事が帰って来た。

「こんな雨の中何考えてたんだ」

「斗空!」

「風邪引いておしまいだぞ」

同じクラスだもん、もちろん帰る時間も同じになる。部活してる子もいるけど、帰宅部は授業終わったら帰るだけだから。

パサッと斗空が傘を開いた、真っ黒な無地のなんとなく斗空っぽい傘を。

傘ちゃんと持って来てたんだ、えらいなぁ。朝ちゃんと天気予報見るタイプなんだね。

「ん」

「え?」

アイコンタクトで何か訴えて来る。

何が言いたいのかわからなくてきょとんとしちゃった。

「帰るんだろ」

「え?」

そう言われてもきょとんとしちゃったけど。

だって、それは…

「一緒に帰るってこと!?」

相合傘っ!!?

「…どこに驚いてんだよ」

なんでそっちが顔をしかめるの!?どこに不機嫌にさせる要素があったかわからない!

「どーせ傘忘れたんだろ」

「…どーせって、そうだけど」

「帰るぞ」

傘をさした斗空が学校の外に出た。ボトボト傘に当たる音でどれぐらい雨が降っているのかよくわかる、傘なしでは帰れないなって感じさせる音がする。

「早く来いよ」

少し先を行く斗空が振り返って私を呼ぶ。

「……うん」

なんだか恥ずかしくて、顔を見られなかったけど雨だしね。

うん、傘の下だから。

見なくてもいいか。

「歩夢、もっと近付けよ濡れるだろ」

「ちょっと変なこと言わないでよ!」

「言ってねぇよ!」