「…ここが臨時寮?」

地図で見るよりかなり学園の奥の方にあった。
森に囲われた古びた2階建ての建物で、灰色のコンクリートの壁が傷だらけな上に明かりも少なそうだった。

これ夜はどうなのかなぁ…

ゴクリと息を飲みながら、もらった部屋の鍵に書かれた番号を確認する。

204?
2階ってこと?

グーっと重たいドアを押して恐る恐る寮の中へ入る、入って左側には自販機、右側には管理室って書いてあるけど小窓から覗いてみても誰もいない…

てゆーか見るからに1階は使われてないっぽいなぁ。
電気は点いてるけどなんか暗いし、本当にここで合ってるのかな不安になって来た…。

えっと、階段はこの奥の右側…
突き当りを右に曲がった時だった。


―ドンッ

「!?」


目の前を伸びて来た腕が視界を邪魔するように壁を勢いよく打ち付けた。
コンクリートにぶつかった重い音にビクッと体が震える。

「こんなとこで何してるん?」

え…、なに?

じーっと上から見られ、通せんぼされた腕のせいで階段も登れない。

「あ、もしかしてオレに告白?ごめんな、でも今そーゆうの考えてないねん」

え、なに!?告白!?
誰が誰に!?

てゆーか誰!!?

「あ、あの…」

「あぁ、ええよええよ。女の子からの告白って嬉しいから、その気持ちはよーぉわかってる」

「…今日からここに住むことになったものです」

きっと全然わかってない、だって私もこの状況あんまりわかってない。

壁際に追い詰められて迫られるみたいな状況、わかるわけがないよ。

「あぁ!そーいえばでんちゃん言うてたわ!」

パッと壁から豊を離して、目を大きくした。

でんちゃん?って誰??

「でんちゃんは事務のおじさんな!会うたやろ?ハゲのメガネの…」

あ、さっきの事務員さんか!

五十嵐伝蔵(いがらしでんぞう)言うねん、でんちゃん」

あぁーそうなんですね…
その情報聞いてもどうしようもないんだけど、もっとここに住むのに有益な情報のが欲しいよ。

「でも、男って言うてたけどなぁでんちゃん」

でんちゃんしっかり情報伝えといてよ!!
全部が全部ぐちゃぐちゃじゃん!

「どう見ても女の子やんなぁ」

「三森歩夢、中学2年生。ちゃんと女子です」

生徒手帳を見せて一応確認してもらう、てゆーか生徒手帳は女子なのになんで男子と間違えたのでんちゃん…!

「歩夢ちゃんな!オレは上川智成(かみかわともなり)、おんなじ中学2年よろしくな!」

「…よろしくお願いします」

出だしからいきなり不安ではあるけど…、悪い人ではなさそう?

いや、でもさっきの告白がなんちゃらって…
そんなに告白されるのかなそれはすごいなぁ。