「ねぇねぇ今度はとあぴ見て」

無事ジョーカーを回避したことによって私のターンは終わった。

「とあぴは一切表情変えないの」

何回も何回も順番が来て、どんどんカードが減っていく。

もうすぐ決着がつくこの戦い…!

「だけどなぜか弱いの」

斗空の敗北で終わった、しかも5回やって全部負けてた。

ずっと同じ顔してたのに!

「いえーい!今日も斗空の負けやな!」

「……。」

「とあぴ弱すぎ~!」

「…。」

わいわい盛り上がってる中、斗空だけ今もずーっと同じ顔してる。

「無敗どころか無勝の男やからな」

「異名ださっ」

言い過ぎじゃないかな?大丈夫かな?

ちょっと心配だけど…

「…どうして勝てないんだ?」

あ、本気で悩んでたんだ。
そんな眉間にしわまで寄せて…

「ふふっ」

おもしろいね、楽しいね。


ここに来てよかったかもしれないね、私。


「はーいっ、そろそろ消灯時間!みんな部屋戻る!」

もうすぐ時計の針が10時を差す頃、食堂にでんちゃんが入って来た。パンッと手を叩いて合図して私たちに片付けを促した。

気付かなかったけど、もうそんな時間なんだ。笑い過ぎて時間が過ぎるの早かったなぁ。

「ほな終わろか」

「えー、もっと遊びたい~!」

「もう時間だから、明日も学校なんだぞ」

智成くんが誰より早くゴミを片付け始めて、ぷくっと頬を膨らましたさっちゃんを斗空がなだめる。


こんな空気感なんだ、臨時寮(ここ)は。


「歩夢!」

立ち上がった私を斗空が呼んだ。

「嫌いなものあるか?」

「………え?」

「ご飯作るのに大事だろ」

あー…そーゆうこと?

今聞くんだ、っていうか聞いてくれるんだ。

てゆーか罰ゲームする気満々なんだ!

「なんだよ、何笑ってんだよ」

「嫌いなものある!納豆に梅干しにトマトにピーマン…」

「多すぎだろ!食え、何でも食え!」

「嫌いなもの聞いたから答えたのに!」

みんなではしゃいで笑って、私も臨時寮(ここ)の空気になれるかな。