「あ、でも2人部屋だよね?相手の子は?臨時寮にいないよね」

「同居人は智成がいたところに行った、ちょうど空いてたし」

「そっか…、じゃあさっちゃんの部屋は?さっちゃんが出たところも空いてるんじゃないの?」

「そこは…」

基本的に1部屋に2人づつなんだから、単純にもう1人分空いてるよねって言ったつもりだった。

「歩夢が入る予定だったから」

「それはごめんなさい…」

ブーメランみたいに私のもとへ帰って来た。

私のせいで行くとこなくなっちゃったんだね…

「別に、歩夢が悪いんじゃないし」

やっと寮の前に着いた。木で囲まれたここは薄暗いけど、その分涼しくて風が吹くと気持ちいい。

「伝蔵さんが間違えたんだろ?聞いた」

「…うん」

大いに間違えられたせいで今現在こうなんだけど、しかも昨日私の叫び声も寝てて知らなかったって言うしね。大丈夫かな、でんちゃん。

はぁっとタメ息交じりで寮の中へ入った。

「でも斗空は今からでも入れるんじゃないの?」

「もういいよ、俺はどこでもいいし」

「そう?ここ不便じゃない?学食行くにも遠いじゃん」

「でも、ここも悪くないしな」

階段を一段上がった斗空がふっと笑ってこっちを見た。


胸の奥がこそばゆくなる、何この感じ…?


「そうだ、歓迎会」

階段を上るために足を上げた私にハッと何か思い出したような顔を見せた。

「昨日出来なかったから今日するって、智成が言ってたけど」

「うん、聞いた!行くよ、今日は!」

「じゃあ夕食の後、臨時寮の食堂で」

くすっと静かに笑う、しかめっ面ばっかりって思ってたのに普通に笑ったりもするからだからこそばゆいんだ。


クールな感じがいいんじゃないの?


意外と優しい瞳、してるんだ。


「伝蔵さんには許可取ってあるからさ」