「あ」

授業が終わって寮に帰ろうと学校を出たら会ってしまった、佐々木斗空に。

「……。」

「…。」


え、何も言ってくれないんだ?

めちゃくちゃ目合ってるのに??


帰るところが同じだから、同じ方向に歩いて行くことになる。

寮までは少し遠いから、このままだとずっと一緒で。


…なんか言った方がいいの?


勝手に隣歩くのもなんだから、ちょっと距離を開けて後ろを歩いた。

「…おい」

「え?」

「ストーカーじゃないんだからこっち来いよ!」

眉間にしわを寄せながら親指を立て、隣を差すジェスチャーをする。


…それ一緒に帰ろうってこと?
誘ってくれてるの?

わかりづらいんだけど。


「……。」


まぁでも呼ばれたから、小走りで隣まで走った。

「昨日は眠れたか?」

「え、あ、うん…ばっちり!」

あれからはすんなり眠れて気付けば朝だった。結構いい目覚めで案外気分もよくて。

「そうか、また隣から女の声が聞こえたら歩夢も怒っていいからなどーせ智成の電話だから」

「うん…」

また呼んだ、歩夢って呼び捨てで。

昨日も一瞬聞き間違いかな?って思ったけど、間違いじゃなかった。

「歩夢?どうした?」

足が止まってしまった私に、同じように足を止めて振り返る。

「あの…」

「ん」

「なんで呼び捨てなの?そんな関係じゃない、…よね?」

「は?」

わかりやすくしかめっ面をする。

私そんな変なこと言ったかな?

「何言ってんだ、だって歩夢だろ?」

…そうだけど。
それはそうなんだけど、私が聞きたいのはそーゆうことじゃない。

「じゃあ!…私はなんて呼んだらいいの?」

少し上を見て、たぶん私との身長差は15センチくらい。

「斗空」

そう言って前を向いて歩き出した。

「他にないだろ」

…他にないの?

まぁ…斗空が言うなら、それでいいけど。

「早く来いよ、置いていくぞ」

「あ、待って!」

駆け寄って隣に並んだ、もう一度。

「ねぇ、あの…っ」

「ん」

「斗空はなんで臨時寮に住んでるの?」

まだ斗空の理由は聞いてなかった。
それぞれ事情はある、でも人気者の斗空が臨時寮に住んでる理由って…

「シャワーが壊れて」

「え?」

「前の部屋のシャワーが壊れて使えなくなったから」

理由不憫…!!!

歓迎会のことといいちょっと…
不運な人なのかな。

本人しれーって答えてるのが何とも言えなくて、それが本当に何とも言えない。