「ねぇねぇ三森さん!三森さんはどうしてこの学園に来たのー?」

放課になると前の席の女の子がすぐに話しかけてくれた。

「あ、あたし千堂鞠乃(せんどうまりの)!鞠乃でいいよ!」

嬉しい、さっそくお喋りできて嬉しい。
ふわふわウェーブのロングヘアーを高いところから結んだツインテールはうさぎみたいだった。

「鞠乃ちゃん…っ、えっと親が海外行くことになっちゃって」

「え、すごいね!!三森さん家の親海外にいるんだって!」

鞠乃ちゃんが呼びかけると自然と人が集まって来て、あっという間に私の周りに人だかりができた。


「海外?え、どこどこ?」

「すご~!お金持ちなの!?」

「なんでこの学園にしたのー??」


本当にあっという間に囲われた、女の子ばかり。


「行き先はオーストラリア…かな」


たぶん、そうだった気がする。 


「えー!オーストラリア!!」

「オーストラリアってどこ?」

「あれじゃない?コアラの!」

「コアラのオーストラリア!」


私のオーストラリアの知識もそれくらいなので、あとカンガルーね。

でも昨日から女の子を欲していた私としてはこの空間すっごい嬉しい…!

でもごめんなさい、お金持ちではないです!ごくごく普通な一般家庭!

「あ、そうだ!三森さっ」

どんっ 

身を乗り出した鞠乃ちゃんがつい勢い余って、私の机をグッと押しちゃったから机の上にあったシャーペンがコロコロコロと転がって行った。

「ごめんっ」

コロンッと机の端まで行き着いたシャーペンはそのまま下に落ちた。
床に落ちたぐらいで壊れないし、大して汚れるわけでもないからそんなの全然いいんだけど…

「ん」

スッと手を伸ばして落ちたシャーペンを取ろうとした時、先に伸びて来た手が拾ってくれた。


隣の佐々木斗空の手が。


「あ…、ありがとう」

伸ばした手でそのままシャーペンを受け取った。

拾ってくれるんだ、ふーん…。

拾ったついでに立ち上がった佐々木斗空はイスを直して教室から出て行った。

放課だし、どこか行くのかな…