「ねぇうるさいんだけど~、全然眠れない~!」

ガチャッと最後のドアが開いた。

黄色の、ここはさっちゃんの部屋のドア…


「誰!?」


だと思っていたのに、そこから現れたのはキラキラに輝く美少年。

真っ黒なふわふわの猫毛は耳や顔周りを少し隠して、それでもお顔の美しさはハッキリわかる。


ふわ~とあくびしながらクマのぬいぐるみを抱きしめていた。あとパジャマもかわいい。

「誰!?」

2回言っちゃった。なんか興奮して。

「えー、今日自己紹介したじゃん~?咲月だよ、さっちゃん!」

さ、さっちゃん…!?

さっちゃんの部屋から出て来たからそうなんだろうなぁとは思ってたけど、あまりに最初の時とは違い過ぎて。

女の子の格好してた時も可愛かったけど、女の子の格好してなくてもすごい…

「何してたの~?ボクもう寝てたんだけど、夜更かしはお肌の天敵なんだからねっ」

「ごめんな、壮太郎。起こしてしもて」

「その名前で呼ばないでって言ってるじゃん!」

なんかもう、次から次へとよくわかんない。

この状況何なのかさっぱりわかんない。


でも…


「ごめんなさい」


頭を下げた。

やっぱり言わなきゃ。

「え、なんで歩夢ちゃんが謝るん?」

「悪いのは智成だろ」

「そーだそーだ!知らないけどたぶん智成が悪いんだ!」

「壮太郎は知らんやん!」

みんなのことまだ知らないのに決めつけてた。

こんな人たちと、こんなとこ住みたくないって、嫌だなって。

それに…
ずっと残ってた。

「歓迎会…してくれるって言ったのに、あんな言い方して」

こうしてみんな心配して集まって来てくれたのに、ひどいこと言っちゃった。

「オレな、忘れるの早いねん!」

智成くんが大きな口を開けてケラッと笑った。

「だから気にしてないで!」

「ボクはまた今度してくれるならいいよ~、今度はやろうねあゆむん♡」

こんな私でも、誰も責めたりしない。

受け止めてくれる。


あったかい空間だったの。