「女子寮に空きがないって本当ですか!?」

季節は梅雨真っ盛りの6月、まさかこんなことになるなんて。

三森歩夢(みもりあゆむ)さん…ね、勝手に男の子って勘違いしてしまったね」

「私、女ですっ!」

三森歩夢(みもりあゆむ)、正真正銘の女の子。
名前が流行りのジェンダーレスネームってやつでたまに男の子と思われることもあるけど、心も身体も女の子な中学2年生。

「いや~、申し訳ない。上手く情報共有が出来てなかったみたいで男子寮の方は空けてあったんだけど」

頭をポリポリと書きながらちょっと髪の毛の薄いふくよかなおじさん…事務員さんがメガネをかけ直しながら私の名簿を見てる。
そこにはちゃんと写真だって貼ってあるのになんで間違えられたんだろう、しっかり確認しといてよね。

「男子寮には入居できないから代わりにこっちの寮で」

スッと出された地図には女子寮と男子寮、そこから少し離れたところに小さな文字で臨時と書かれていた。

「でもここがね、男子寮ってわけじゃないから。女子も入れるんだよ、あくまで臨時で入居する“臨時寮”だから」

いや、寮付いてないじゃん。地図には臨時しか書いてないじゃん。

「こんな変な…珍しい時期の転校生はこの学園にはあまりないから急遽寮を用意するのは時間がかかってしまってね、用意出来たらすぐ引っ越し出来るようにするから」

「……。」

季節は梅雨真っ盛りの6月、私だってこんなつもりじゃなかった。

お父さんの海外赴任が決まってすぐに旅立つことになった。
お母さんはついていくって言ったけど、私は日本に残りたい!って言ったら…


条件として出されたのが全寮制のこの学校に入ることだった。


好きな漫画の最終回が近いから絶対に読みたくてこっちに残りたいなんて考えるんじゃなかったよ…、海外へ行くよりも大変なことになりそうだもん。

「まぁ、とりあえずね。女子寮に空きが出るまで臨時でここに住んでもらえないかな、これ部屋の鍵ね」

「……はい」

もらった地図を持ってはぁっと息を吐きながら事務室を出ることにした。

これ以上言ってもしょうがないよね、空きがないって言われたらそれ以上どうにもできない…


大人しくここに住むしかないんだ。


誰も住んでない、この寮で1人…


「あ、三森さん!」

「はい」

「今その臨時寮、三森さんの他に3人住んでるから」

「え、そうなんですか!?」

1人じゃないの!?
他にもいるんだ、じゃあいいか!

1人だったら心細いけど、他にも住んでる子いるなら…


「男の子が3人、住んでるから」

「………え?」


えーーーーーーーーーーっ!!!?