「……お前の言い分は解ったが、コクが本当に私を必要としてるかどうかは別の話だろう。
現に、コクは私と距離を置きたがっているようだし……」

百合子の言葉に、美狗がキッとまなじりをきつくした。

「それもこれも、貴女様をこの世界に留めてはおけぬと、お思いになられているからこそ! それが、解りませぬか!」

苛烈な眼差しが、言葉と共に百合子をなじる。

美狗のコクを想う気持ちにたじろぎ、百合子は素直に認めることができなかった───コクの本意を。

(私を返そうしているのは、あやつにとって私が、必要ではないからではないのか?)

微笑みを浮かべ、自分を呼ぶコク。
優しい言葉で、自分と距離を置くコク。

「……私は、あと二日の意味が知りたいと言ったはずだ」

冷ややかに、百合子は美狗を見下ろした。

(本当に私が必要なら、なぜ己の口で言わないのだ!)

百合子を元の世界に返すこと───それが本当に百合子自身のためだと思っているのか。

近づこうとする百合子と、遠ざかろうとするコク。

(元の世界に返すというなら、コクはなぜ、私を“花嫁”にしたのだ)