そもそも明里は小テストの存在すら忘れてしまっていた。冷や汗を流し、固まってしまった明里を見て舞は深い息を吐く。そして自分の前の席を自分の机とくっつけ、向かい合わせた。

「片桐さん、何してる?」

「決まってるじゃない。一緒に勉強しましょ?」

「ええッ!?」

明里の口から大きな声が出た。その声はすぐに静かな教室に消えてしまう。舞は表情を一つも変えないまま、「早く教科書とノートを持って座って」と言い、また椅子に座って勉強を再開した。

(片桐さんに教えてもらえる……)

普段、高嶺の花として同じクラスだというのに遠くから見つめることしかできない舞と接することができる。そのことに対して緊張を抱いたものの、喜びも胸の中にはあった。

明里が教科書とノート、そして筆記用具を持って舞と向かい合って座ると、彼女は自分の勉強の手を止めて明里をジッと見つめた。

「そ、その……私、お恥ずかしながら英語全然ダメなの」

「知ってる。授業中、先生に当てられた時のあなたを見ていたら嫌でもわかるわ」