(ど、どうしよう……。みんなの憧れで、しかも私が恋してる片桐さんと二人きりなんて!)

明里は窓の外の景色に集中しようとするものの、舞がシャープペンシルで何かを書き込んでいる音が耳に届いてぼんやりすることができない。意識は嫌でも舞に向けられてしまう。

明里が窓の外から教室に目線を移すと、机に向かっている舞の後ろ姿が見える。その後ろ姿でさえどこか美しく感じ、明里の胸が大きな音を立てていく。

「ねぇ」

勉強する手を止め、舞が振り返る。その頰はほんのりと赤く色付いていて、明里はメイクをしているのだろうと思った。

「な、何?」

「今日、英語の小テストがあるの覚えてる?」

「あっ……」

舞の言葉に明里は顔を青くする。明里は「苦手な科目は?」と聞かれると真っ先に「英語」と答えられるほど、英語が苦手だ。英語の時間は先生に当てられないよう祈っているほどである。

「……その様子だと、小テストの勉強してないみたいね」