私が過去に恋をしたとすれば、小学校、中学校、高校の3回だろうか。
どれもきっと私は本気で好きだったんだと思う。
だけど、特に印象にある恋といえば中学校の頃だろうか。

中学2年生の葉桜が終わる頃、私は彼と出会った。
廊下をすれ違う時に、私の隣に並んでいた男子が彼に親しく声をかけたのだ。
彼とその男子、匠は同じ部活らしく、軽口を叩きあっていた。
そこで匠は私に、「こいつが面白いものを見せてくれる。」と言って、私を前に突き出したのだ。
その面白いもの。
それはただの先生のモノマネだった。
似てると思っただけで、別に面白かったわけではないし、そもそも初対面だから、どんな反応をすればいいかわからなかった。
ただ、私の周りにいた女子も男子も、もちろん匠も、大爆笑してその彼に「アンコール!」と叫んでいたのだ。
そのアンコールに答える、いわばアイドルだった彼は何度も何度もそのモノマネをやり、爆笑の嵐を吹かせた。
私としては、特に面白いとは思えなかったが、クラスに戻る際、匠から出た「祐斗」という名前が、いつまでも鮮明に覚えていた。