「ロマンチックだもんな。」
俺がそう言うと、またもや結衣は寂しそうな顔つきになった。
また失言か。

「そーいえばさ、美桜が彼氏と別れたらしいよ。」
目線はテレビだったけど、明らかに俺に話をしているのは伝わった。
「美桜って、高校のときの?」
「そーそー。3年付き合っていい人そうな人だったのに残念。」
そう話す瞳は、悲しげだった。
他人のことなのに、何故そこまで悲しめるのだろう。
彼女の気分が上がらないのは、ここからか。
「ふーん。」
俺の言葉で、また会話がきれた。

「どんな恋をしてたんだろ。」
結衣の呟きが、テレビの雑音で流されそうになった。
ただ、テレビのような明るい声ではなかったため、俺はすぐに反応することができた。
「美桜ちゃんか?」
俺はてっきり、美桜ちゃんは過去にどんな恋をしていたのか、ということなのだと思っていたが、結衣は乳児がイヤイヤと首を振るように、そんな風に首を振ってみせた。
「ちがうちがう。どんな恋をしていたのかってこと。」
俺を指さしながらそう言った。