「前見えますか?よかったら駅くらいまで送りますけど…。」
今日はスーパーに寄るくらいで特に用事はなかったので、私は渡辺さんを駅まで送っていくことにした。

どうやら、渡辺さんは私と同じ駅を使っているらしく、一緒に駅に乗ることになった。
会議中もお互いに特に発言していなかったので、会話が弾むこともなく、私は渡辺さんに道案内をするだけ。
渡辺さんも、特に話しかけてこなかった。

駅に着いたとき、乗車券を買うかと聞いたらICカードがあるらしく、私だけが券売機に向かった。
取り出したカードーキーに私が昔、裕斗にあげたキーホルダーがついていたなんて、ただの偶然だろう。
乗車券を買って渡辺さんのもとに戻ると、誰かに連絡を入れていたので、私はそっと隣に並ぶ。
私も堅治に連絡を入れた方がいいかな、なんて思ったけど、いつの間にか連絡を終えていた渡辺さんが私を見下ろしていたから、準備ができたことを察して、
「いきましょうか。」
と、声をかけ、2人並んで歩き出した。