それから上村さんと上司に今日の会議報告をした後、私は上村さんからの指示で早く帰宅することができた。
まだ仕事が残っていたはずだが、私が会議に出席しているうちに他の社員がやってくれていたそうだ。
私の会社は優しい。
心でお礼を言ってから、オフィスを出る。

そういえば、今日の夕飯は何にしよう。
堅治は早く帰ってくるかな。
最近は仕事で疲れが溜まっているっぽいし、堅治の好きなカツ丼にでもしようかな。
そんなつまらないことを考えていると、花壇の近くでしゃがみこんでいる人がいた。
体調が悪いのかな、と思い、おそるおそる歩み寄ると、さっき会議をした、たしか、、、。
「…渡辺さん?」
私がその名を呼ぶと、彼はゆっくりと振り向いて、そして、私を見て驚いたように目を見開いた。
「…立花、さん。」
「どこか具合でも悪いんですか?なにか飲み物買ってきましょうか?」
私がそう聞くと、渡辺さんは慌てて頭を振る。
「ち、違うんです…!コンタクトを落としてしまって探しているんですけど、どうしても見当たらなくて。」
そう言って力なく笑う。
この花壇の近くにコンタクトを落としたとなれば、地面に落ちて汚くなっているし、たぶん見つけられないだろう。