「今日って重要な会議ですよね。すごい緊張しますよ。」
私が苦笑ぎみにそう言うと、上村さんは少しだけ不思議な顔をした。
「別にお前は緊張する必要ないだろ。お前はただいるだけでいいんだぞ。」
上村さんはまた眩しい笑顔を作る。
この人はどんな時でも笑ってるなぁ。
「ただって…。」
「大丈夫だ。今回の契約会社の社長は心が広いし優しいんだよ。失敗したって笑って許してくれるだろう。」
上村さん、あなた私の気持ち本当にわかってないでしょ。
私は内心彼に呆れながら、会議室までの道を歩く。
普段は私服でスニーカーなのに、今は黒いスーツをまとってヒールを履くなんて、違和感が残る。
会議室にの前に立って、軽く深呼吸をする。
そんな様子を見た上村さんはふははっと声を出して笑ったけど、そんなことなんて気にしていられなかった。
コンコンガチャッ
「失礼します。」
上村さんが先に入り、私は後ろからそれに続く。
取引先の人だろう、椅子に座っていた2人の男性は、立ち上がり、綺麗なお辞儀をした。
「あすかぜ編集部の上村です。」
上村さんが名刺を差し出す。
私もそれに急いで続いた。
「立花です。今日はよろしくお願いします。」
そう言ってできる名刺を差し出し出来る限りのお辞儀をする。