俺がそんな彼女を横目で見ながらカレーを黙々と食べていると、不意に結衣がこんなことを呟いた。

「もうすぐ夏だなぁ。」

「まだ春だろ。最近桜咲いたばっかりだし。気がはえんだよ。」
思わずつっこむと、結衣は声を上げて笑った。
「ふはははっ確かに気が早いや。」
そんなに声を上げるほどだったのか。
そう思いながらも、彼女のペースに合わせた。
「桜が散る前に花見でもいこうぜ。」
俺が明るくそう言うと、結衣は急に真顔になった。
「、うん。そうだね。」
大人しくなった結衣に少しだけ不安になる。
また無言の空間がうまれ、俺は思わず咳払いをした。
対する結衣はそんな空気なんて知らず、テレビに魅入っていた。

「へー今の若者って、デートでプラネタリウムなんて行くんだ。」
いつの間にか、天気予報から街角インタビューに映っていたらしい。
結衣はそう言って俺を見た。
またあの空気が流れるんではないかと思い、言葉選びが変に慎重になった。