高校に入ってから、ひたすらバレーに打ち込んだ。
部活を理由に彼女を作る気がないと同級生に話したので、告白してくる女子も少なかった。
モテたいという気持ちも自然に薄れていって、告白してくる女子を見て思い出すのは陽菜が告白してきた声だった。
だからこそ、いつも思い出してしまう。
陽菜に別れを告げられた日を。

高校2年生のときだっただろうか。
インターハイの予選の会場で1試合目を終えたあとだった。
トイレに行くという仲間を待つために、近くのパイプ椅子に座っていたときだった。
ふと、小柄な女子が目に入った。
最初は誰かを探しているのかと思ったが、キョロキョロと辺りを見渡して、少しだけ涙目になっているところを見ると、きっと迷子だろう。
俺は渋々彼女に歩み寄り、声をかけた。
何度か「あの、」とか「おい、」とか声をかけてみたけど誰のことなのかわかっていないらしく、なかなかこちらに気づいてくれなかった。