『別れよう。』

その言葉は今も鮮明に覚えている。
人は声から忘れると言うけれど、俺はそんなの嘘だと思う。
陽菜の声は今でも覚えているし、きっとすれ違ったら声で分かると思う。
たぶん俺は声より顔や仕草を人間は忘れると思う。
陽菜の顔や仕草は覚えていない。
別れを告げられてから、俺は何をしたんだろう?
特にショックも受けていなくて、本当に最低だと思う。

だから俺は一生これから誰かを好きなることなんてないと思っていた。

「陽菜に聞いてみれば、あんた部活引退したのに陽菜のこと全然構ってあげてなかったんだってね?サイテーすぎでしょ。」
早坂に言われて、気づいた。

陽菜はもっと前から寂しいかったことを。
でも俺に迷惑をかけたくなくてずっと隠していたんだ。
言ったら、俺に面倒くさがられる、嫌われる、別れを告げられる。
そう思って自分の気持ちを抑えていた。
俺は彼女に、無理をさせていたんだ。