「陽菜さんの体調は、大丈夫なんですか?」
怒りを表に出さないように、俺はゆっくりと"あの人"に尋ねた。
「体調は良くなったんだけど、、、なんだか学校に行きたくないみたいで。」
そんな他人事みたいなことを言う"あの人"は、また困った顔で笑った。
あぁ、陽菜が嫌だと思うのはこういうところなんだな、と、俺は納得してしまう。
迷惑がられているような、本気で心配していないように思えるこの表情に、陽菜はきっと嫌気が差したのだろう。
「そう、ですか。その原因はわからないんですね?」
問いつめるように俺は"あの人"に言う。
"あの人"は俺の言葉に少しだけハッとした。
俺が怒っていることを汲み取ったのだろう。
「…ええ。」
と、静かにうなづいた。
「少しだけでも陽菜さんと話せませんか。」
俺と早坂が頭を下げると"あの人"は渋々といった様子で
「わかったわ。」
と言った。