連絡が途絶えてから2週間が経ち、俺は陽菜と特に仲のいい早坂冴と一緒に、陽菜の自宅を訪ねた。
インターホンを押すと、玄関から女性が出てくる。
年齢は30前半くらいだと見積もれる。

『あの人』
陽菜がそう呼んでいた人だとすぐにわかった。
"あの人"は少しだけ困った顔をして、「陽菜ちゃんの、お友達さん?」と朗らかな声で俺たちに聞いた。
「陽菜の友達の早坂冴です。」
早坂がハキハキと自己紹介をした。
「双葉堅治です。陽菜さんと、お付き合いさせてもらっています。」
俺は軽く会釈すると、"あの人"は目を見開いた。
「そうなの、、、。まさか陽菜ちゃんに彼氏さんがいるなんて知らなかったわ。あの子はあまり自分を語らない子でね。学校の様子とかよく分からなくって。でも良かったわ。陽菜ちゃんにもちゃんと大切にしてくれる人がいたのね。」

『あの子はあまり自分を語らない子でね。』
その言葉が胸に突き刺さる。
自分のことを言えないようにしているのはあんたがいるからじゃないのか。
思わずそうきつく言い返しそうになってしまった。