特にロマンチックな思い出はない。
プラネタリウムを観たあと、駅前のパンケーキ屋さんでパンケーキを食べて、ゲームセンターでプリクラをとってユーフォーキャッチャーをして、公園のベンチに座ってしばらく話をしたくらいだ。

「なんで今日誘ってくれたの?びっくりしちゃった。」
私が夕暮れの空の下で問いかけると、祐斗は真面目な顔つきをした。
「…告白されたとき、俺すごい悩んだ。連絡をしていたときも、初めて話をした時も、全然悪い子じゃなさそうだし、頭も良くて運動もできる子から好かれて純粋に嬉しかった。」
そんな風に思われているなんて、思ってもいなかった。
祐斗にとって、私は迷惑で邪魔な存在だと思っていたから、嬉しいと思った。
「でもさ、全然話したことないのに、告白されて付き合うって変じゃん?遊びに行ったこともないし、」
たしかに言われてみればそうなのだ。
話したことも、出かけたこともない人を好きになるなんて、変だ。
「だから今日、しっかり知ろうと思って。」
そうやって祐斗は、笑った。
初めて見たんだ。
学校でも部活でも、この前話した時も、見られなかった、初めての顔。

「…君は、悪魔か…。」