「ただいまー。」
会社帰り、くたくたになりながらなんとか家にたどり着くと、玄関からリビングの灯りが漏れていた。
靴から見て、たぶん彼女だろう。
そう思いながらリビングのドアを開けると、案の定、キッチンに鼻歌を歌うご機嫌な彼女がいた。
「ただいま。」
俺が今度は彼女に言うと、俺に気づいた彼女は鍋から視線を俺に移し、
「おかえり!」
と、ニコッと笑ってみせた。
「今日来る日だったっけ?」
ネクタイをほどきながら彼女に尋ねると、彼女は口角をあげながら、
「連絡しないと来ちゃいけないなんてきまりあったっけ?」
と意地悪な笑みを浮かべた。
本当にこいつは最近意地が悪い。
付き合う前は敬語で初々しかったくせに、今はタメ口で、おまけに俺をからかって楽しんでいる。
「んなこと言ってねえだろ。」
俺はいつものように呆れながら言い返す。
「そんな怒んないでよー。ちょっと顔出したかっただけだよー。」
なんて、俺の機嫌を宥めるように彼女は笑いながら言う。