「ウソ……南条くん⁉ ねえ、南条くん、こんなときにふざけないでってば!」

 大きな声で名前を呼びながら、そうじ道具入れの中や、教卓の下を探し回る。


 どこにもいない。

 なんの物音もしなかったし、一分もしないうちに戻ってきたはずなのに。


 ……そういえば、ここの窓って全部閉まってなかった?

 一番うしろの窓が開いていて、カーテンがパタパタと風にあおられ揺れている。

 まさかあそこから落ちたんじゃ……。


 悪い予感に、ドクンドクンと心臓が大きな音を立てる。


 やめてよ、ヘンな想像しないでよね。いるわけないってば。


 一歩一歩窓へと近づいていくと、窓から下をそーっとのぞき込む。


 はぁ~~……ほらね、いるわけないんだってば。


 窓枠に手をかけたまま、その場にへなへなとしゃがみ込む。


 それじゃあ、どこにいったの?

 もしも、ここから南条くんを連れ出したのだとしたら、犯人は……。


 身内の人間だとは考えたくない。考えたくはないけど、そうとしか思えない。

 だって、忍び以外に、一人の人間を担いでここから逃げられる人なんている?


 そうじゃないとすれば、神隠し?

 いやいや、そんな非現実的なことを考えている場合じゃない。

 とにかく、戻って圭斗に相談しよう。


 そう思って、教室を出ようとしたそのとき——。