「今なら、誰もいないみたい」

 物陰からそっとあたりを見回してから、南条くんに声をかける。

「できるだけ足音を立てないようにね」


 窓が開けっ放しになっていた一階の教室から、校舎内へと侵入を試みる。

 あ。ちなみに体育館を出るときに、王子の衣装はこっそり脱いできた。

 だって、あのままでは、なにかあったときに本当に困るから。


「ほら、南条くん」

 先にひょいっと窓枠にのぼると、外にいる南条くんへと手を伸ばす。

「は? このくらい、一人でのぼれるし」

 ムッとした顔をしながら、南条くんが窓枠に手をかける。

「くそっ。このドレス、邪魔すぎるんだけど」

 うまく足が上げられず、イラつく南条くん。

「だから、ほらっ」

 わたしがもう一度手を差し出すと、イヤそうな顔をしながらも、わたしの手につかまって、なんとか侵入に成功した。

「……ほんとは一人でできるんだからな」

「わかってるよ」


 ふふっ。負けず嫌いなところが、なんだかかわいい。

 なんて言ったらもっと機嫌が悪くなるだろうから、言わないけど!


「そういえば、さっきの爆発って、どこであったんだろうな」

「圭斗が今確認に行ってるところだから正確なことはわからないけど、あの音の聞こえ方からすると、ゴミ捨て場のあたり、かなぁ?」

「そうか。なら、こっちの南校舎の教室でまだよかったな」

「そうだね。北校舎の方だと、すぐ裏手がゴミ捨て場だしね」