「とにかく、みんな落ち着いて。さっきも言ったけど、ここを一番念入りに調べているはずだから、ここが一番安全だよ。警察を信じよ」


 さっきわたしに文句を言いながら詰め寄ってきた男子たちは、わたしがステージから落下した責任を感じているのか、みんな黙ったままだ。


「とりあえず、この姫の衣装、早く脱ぎたいんだけど」

 南条くんが、うんざりした表情でドレスを小さく引っ張る。

「そうだね。わたしも、着替えたいと思ってた」

「でも、教室まで行かなきゃいけないのか。結構遠いな」

「あー……そうだったね」


 どうしよう。取りに行きたいけど、ここに南条くんを置いていくのは、やっぱりマズいよね。

 かといって、一緒に行くっていうのも、危険が大きすぎる。

 あぁっ、もう。さっき、圭斗に頼めばよかったぁ!


「あたしもさすがに着替えたいかなー。カッコいいから気に入ってるけど、この騎士の衣装」

「オレも。スカートって、スカスカしてなんか落ち着かねー」

 王子の護衛の騎士役の愛莉さんと、姫の侍女役の北澤くん、それに他の演者の子たちも口々に同じことを言いだした。


 うーん、困ったぞ。

 さすがに一人で全員分の着替えを持ってくるのは、どう考えたってムリだ。

 万が一のときのことを考えて、実は衣装の中に忍び装束を着ているから、もしもの場合は衣装を脱ぎ捨てればなんとかなる。

 やっぱり制服を取りにいくのは諦めるべきか。

 そうだよね。それが一番だ。