あると思った床が急に消え、そのまま仰向けにステージの向こう側へと落ちていく。


「詩乃ー!!!!」


 南条くんがめいっぱい手を伸ばしてわたしの手をつかもうとしてくれたけど、空振りする。

 衣装のせいで体が思うように動かせず、うまく受け身の体勢も取れそうにない。


 ぎゅっと目を閉じ、体を固くして衝撃に備えていると——。


「ったく。なにやってるの、忍びのクセに」

 耳元で声がして、おそるおそる目を開けると……圭斗に、お姫様抱っこされてる~⁉

「ごめっ……ありがと」


 っていうか、早く下ろして~!!


「詩乃、大丈夫か⁉」

 南条くんが、ステージに四つんばいになって、こちらをのぞき込む。

「だ、大丈夫!」

 慌てて圭斗の手から下りると、なんでもないふうを必死に装う。

「はー……もう、ガチで勘弁してくれよ」

 わたしの無事な姿を確認して、南条くんが大きく息を吐き出した。


「ねえ、圭斗」

「うん、わかってる。まずは、状況を確認したい。詩乃は、このままここに残って護衛を頼む」

「うん、わかった」


 胸の前でぎゅっと握り締めた両手が、小刻みに震えている。


 しっかりしろ、わたし。わたしが怖がっててどうするの。

『全部わたしが守る』って言ったんでしょ?