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 そして、劇の本番は滞りなく進み、残すは姫に目覚めのキスをするシーンのみとなった。


 ドッドッドッドッ……。


 心臓がおかしくなりそうなくらい速く打っている。


 ここまではちゃんとうまくやれたんだ。

 最後だって、うまくやりきってみせる。


「ああ、美しい姫よ。目覚めておくれ」


 寝台の上に横たわる姫に、ゆっくりと顔を近づけていく。


 ドッドッドッドッ……。


 南条くんに心臓の音が聞こえてしまいそう。

 ……っていうか、全然目覚めてくれないんだけど⁉

 ねえ、早く目覚めてよ。

 これ以上近づいたら、くっついちゃうから!


 ……ええい、こうなったら……っ!


「姫、お目覚めの時間ですよ」


 わたしがそっとささやくと、ぱちっと南条くん——もとい、姫の目が開く。

 息のかかってしまいそうな距離でしばらくの間見つめ合ったあと、わたしはそっと『おでこ』を南条くんから離した。

 南条くんの顔が、真っ赤に染まっている。


 どんなケガでも病気でも治せてしまう、南条くんの不思議な力。

 その力があれば、きっと眠り姫の呪いだって解いてしまうに違いないって思ったんだ。