「な、なんでしょうか?」


 び、美人の迫力すごっ……!


 一歩後ずさりするわたしの右手を取ると、手の甲にキスをする……マネをする南条くん。

 と同時に「「「きゃーっ!」」」と小さく悲鳴が湧き起こる。


 ちょっと待って。普通手の甲にキスをするのは、王子の方では⁉ いや、しないけども。


「王子、わたくしをキスで目覚めさせてくださるのを、楽しみにしておりますわ」

「だから、しないってば!」

「「「しなきゃダメじゃん!」」」

 部屋にいたメンバー全員から、一斉にツッコミが入る。


 ストーリー的には、もちろんそうだけどね⁉

 でも、南条くんが言ってるのは、たぶん演技じゃなくて……。


『だって、最後にごほうびくれるんだろ?』なんて言ったときの南条くんを思い出す。


 だから本当にはしないってば!

 これは、あくまでも劇。演技なの。


 ぶるぶると頭を左右に振ると、わたしは自分を落ち着かせようと、何度か深呼吸した。