あーっ、もう。

『僕はあくまでも補佐役。これ以上頼らないでくれる?』ってことね。

 だったら、本人に確認するしかない。


 バタバタと南条くんの席まで行くと、「なん……どう……して!」と意味不明な声を発しながら腕を引く。

『南条くん、どういうことか説明して!』って自分では言ってるつもり。


「いいからおとなしく座れって。望月の席はそっちな」

 平然としたまま、隣の机を指さす南条くん。


 なに? キスなんて日常茶飯事で騒ぐほどのことじゃないってこと⁉

 モテ男子、こわっ!

 しかも、気を失ったわたしに無理やりするとか、わけがわからないんですけど。


 ……いやいや。さすがに見間違いだよね?

 だってそうでしょ?

 絶世の美女ならいざ知らず、会ったばかりの、特別にかわいいわけでもなく、色気もゼロのわたしなんかに、そんなことするわけないじゃない。


 なんとか自分で自分に言い聞かせながら席に着くと、親しげに南条くんに話しかける男子の声が隣から聞こえてきた。


「なんか、すげーウワサんなってんだけど。おまえ、ガチでしたの?」

 チラッと横目で見ると、短髪で活発そうな男子が、南条くんの向こう側の机の上に腰かけてしゃべっていた。