「だったら、ラブの方がいいかなー」

 こわごわ南条くんの傍らにしゃがむと、南条くんがそっと場所を譲ってくれる。

「ほら、もっと近くに来いって」

「う、うん……」

 ドキドキしながら、そっとラブの背中に触れてみる。


 思ったよりも、ペタッとした固い毛並み。

 毛並みにそってなでてあげると、ラブがうれしそうにわたしのほっぺたをペロッとなめた。


「ひゃぁっ!」

 小さく悲鳴をあげて、ざざざっと後ずさりする。

「こら、ラブ。これは俺の。勝手になめたらダメだぞ」

「ワフッ!」


 ふふっ。南条くんの言ってることがわかっているみたい。

 こうやって離れて見ている分にはかわいいんだけど、やっぱり近づくのはちょっと怖いかも。


「ほら、ラブは先に家に戻ってな。ハウス、ラブ」

 南条くんの指示で、ラブがとことこと家に向かって歩いていく。

 本当に賢い子。

「悪かったな。無理やり触らせて」

「ううん、大丈夫。なめられたのは、想定外だったけど」

 わたしがあははと引きつった笑みを浮かべていると、

「うん、ごめん」

 と言いながら、ラブがなめた頬のあたりに、南条くんが手を伸ばしてくる。

「こ、こうやって拭いとくから、大丈夫!」

 キュキュッと袖で頬を拭うと、南条くんに悟られないようにそっと一歩後ずさりする。