ほらね、全部他人のため。そういう人なんだよね、南条くんって。


「爆破予告の件もあるし、明日は警察も警備にあたってくれるって。それに、わたしも圭斗も、全力で南条くんを守るって約束する。ううん、南条くんが大切にしたいって思ってるものは、全部わたしが守る」

「俺が行かなければ、誰も危険な目に遭わずに済むんだよ」

「でもっ……そ、そうだよ。爆破予告は、南条くんを名指ししてるわけじゃない。だから、南条くんがいなくたって起こるかもだし」

「だったら、イベント自体を中止すべきだ」


 それはそうなんだけど、学園長は、『我が学園は、このような脅しには屈しない』と、すでに決行の意志をはっきりと表明している。

 元々良家のご子息ご令嬢が多く通う学園。独自の警備体制が万全だという自信もあるのだろう。


「わたしはね、南条くんと一緒に、楽しい思い出を作りたいの!」


 そうだよ。結局は圭斗の言うとおり、わたしのワガママだ。

 南条くんに、楽しい思い出を作ってほしいっていうのは建前で、わたしだってクラスのみんなと楽しい思い出を作りたいって思ってる。

 そしてそこには、南条くんもいてくれなくちゃ、楽しい思い出は完成しない。


 任務だってことは、もちろんわかってる。けど、わたしだって中学生だもん。

 少しくらい学校生活を楽しみたいって思ってもいいじゃない。