「まったく」

 圭斗の消えた方をじっと見つめたままぼそりとつぶやくと、おじさんがわたしの方をもう一度見る。

「ここにいるっていうことは、南条ホールディングスの長男くんの護衛かな?」

「いや、えっと、その……」

 突然の核心を突く問いに、目が泳ぐ。


 いくら元望月家の忍びだったとしても、抜け忍に任務について話すわけにはいかない。

 けど、ごまかしきれない自信しかない!


「ごめん、ごめん。そりゃあ依頼については言えないか。実はうちの管轄の中でも、彼は重要人物として挙げられているんだよ。以前から、彼の周囲で事件が頻発しているからね」

「わたしも、そう聞いてます」

 わたしが神妙にうなずくと、おじさんが苦笑いする。

「詩乃ちゃん、アウト」


 あぁっ、しまった!


「まだこれが彼と関係のある事件なのかはわからないけど、ここは僕たちに任せて。君たちは、彼のことをしっかり気をつけて見ていてあげるんだよ」

「わかりました。ありがとうございます」

 ぺこっと頭を下げると、わたしは足音を立てず、周囲に注意を払いながら、圭斗の背中を追った。