「でも、このままじゃ南条くん、ステージ発表会に出られなくなっちゃうよ」

「今までもそうだったのなら、今回もそうすべきだと僕は思うけど?」

「せっかくみんなと楽しい思い出が作れるチャンスだと思ってたのに……」

「ねえ、詩乃。ちょっと依頼人に肩入れしすぎじゃない? 僕たちの仕事は、あくまでも依頼人の命を守ること。それ以外の心配までしていたら、キリがないよ」

 圭斗が淡々とした口調で言う。


 たしかに、そうなのかもしれない。

 けど……。


「わたしは、依頼人の命だけじゃなく、幸せも守れる人になりたいの」

「は? 依頼人の幸せ?」

 圭斗が『なに言ってんだこいつ』っていう心の声が聞こえてきそうな顔をする。

「南条くんにとっての幸せ……っていうのがなにかまでは、まだわからないけど。だからこそ、いろんなことをみんなと一緒に経験してほしいし、その中から、自分の幸せを見つけていってほしいなって思う」

「ほんと君って、新米のクセに生意気なことばかり言うよね」

 圭斗が、大げさなくらい大きなため息をつく。

「任務外の外出に付き合ったかと思ったら、今度は学校を自主的に休んでるヤツを無理やり引っ張ってこようって? 学校に来たくないから来ないんじゃない。危険だから——みんなを危険な目に遭わせたくないから、休んでるんだよ。そのくらい君にだってわかるだろ」

 だんだん圭斗の口調が荒くなっていく。