「だったら、俺から提案。俺、王子役が詩乃だったら、やってもいい」

 いつの間に起きあがったのか、南条くんが突然そんなことを言いだした。

「なっ……⁉」


「え、詩乃って誰?」

「あの子だよ。ほら、王子の彼女」

「あー。あの、南条くんの隣の席の子かあ」


 うぅっ。影が薄すぎて、まだ名前すら覚えられていないのが悲しい。

 いやでも、忍びとしては、ある意味百点満点なのでは⁉

 っていうか、わたしが王子役だなんて、みんなが納得するわけないでしょ。


「まあ、愛莉がダメなら、しょうがないかあ」

「眠り姫は、あのシーンがあるしねー」

「ああ、そっか。なら彼女が適任かも」

「他の子がやったら、ファンクラブ会長になにを言われるかわかんないし」

「言えてる!」


 あのシーン……?


 しばらく考えてから、ハッとする。


 そうだ。今回の演目は、眠り姫。

 ということは、最後に……。