「そんなことない! 君だって、ずっとがんばってたら、きっとなりたいものになれるよ。うーん。それじゃあ、得意なこととか、好きなことは、なにかないの?」

「僕は……人のケガや病気を治すことくらいしかできないから」

「ケガや病気を治すの? あ、わかった! 君、お医者さんになりたいんだ」

「お医者さん……そっか。考えたこともなかったな」

「そうなんだ。でも、治すのが得意なら、ピッタリだね」

「うん。……だったら僕、目指してみようかな」

 さっきまで沈んでいた男の子の声が、なんだかちょっとだけ明るくなったみたいだった。

 それだけのことなのに、なんだかすごくうれしかったっけ。

「じゃあ、指切りげんまんしよ。わたしは、わたしのなりたいものに。君は、君のなりたいものになるっていうお約束」

 そうして、二人で指切りして。そのとき、ちょっとだけ笑顔を見せてくれた。


 そういえばあの子、勉強がんばってるかなぁ。

 お医者さんなんて、いっぱい勉強しなくちゃなれないから、大変そう。


 わたしね、あのときの約束を、修行が苦しくなるたびに思い出してたんだ。

 きっとあの子もがんばってるんだろうなって。

 だったらわたしも負けずにがんばらなくちゃって。