『圭斗から話は聞いている。また危ない目に遭ったそうだな』

 今日の任務の報告のため、お兄ちゃんとビデオ通話をつないだ瞬間、怖い顔のお兄ちゃんが映し出された。

「ごめんなさい! ……でも、依頼人は無事でした」

『圭斗にも言われていると思うが、おまえ自身も無事に帰らなければ意味がないんだよ』

「うん……わかってるよ」

『詩乃。今は任務の報告中だよ。詩乃の兄ではあるが、頭首として接するようにと言ってあったはずだ』

「は、はい。申し訳ありません」


『任務には、常に誇りと責任を持ってあたること』

 これは、初任務前日——つまり入学式前日、三年前に頭首だったお父さんが亡くなってから、頭首代行を務めているお兄ちゃん・望月(はやて)がわたしにくれた言葉だ。


 お兄ちゃんは、わたしとは十個も歳が離れていて、今年で二十三歳。

 わたしが修行をはじめたときから、わたしの師匠はお兄ちゃんだった。

 修行が厳しくて泣きたくなったこともあったけど、お兄ちゃんはいつだって笑顔で励ましてくれた。


 でも、そんなお兄ちゃんが、お父さんが亡くなってからは、全然笑わなくなっちゃったんだ。

 笑顔に見えても、心からの笑顔じゃなくて。

 それに、それまでよりも、ずっと厳しい修行になった。

 それはきっと、お父さんのようにならないようにって……お兄ちゃんの気持ちは痛いほどわかったから、わたしも必死にお兄ちゃんの修行についていったんだ。

 お兄ちゃんがいてくれたからこそ、わたしはここまで成長できたんだって思ってる。