「……フリだってバレないようにするのも、詩乃の任務のうちなんじゃないのかよ」

「ごめん……そうだよね」


 そっか。わたしがちゃんとフリをしないから、怒ってるんだ。


 わたしが顔をうつむかせると、一瞬小さく観覧車が揺れる。


「⁉」

 気づいたら、南条くんがわたしの横に腰を下ろしていた。

「俺の隣にも座ってくれないし。そんなんじゃ、アイツらにウソだってバレるだろ」

 南条くんが、窓の方を向いたままぼそぼそと言う。


 ち、ちょっと待って。これ近っ……近すぎるんですけど。

 なんだか南条くんとかすかに触れ合っている体の左半分がアツくてドキドキする。


 ここここれは任務。任務です~っ!!!!


 心の中で叫んで、なんとか平静を保つ。


「アイツら、俺らがいないのをいいことに、キスでもしてそーだよな」

「そ、そんなこと……」

 ちらりと先を行くゴンドラを見上げる。


 いや、見えるわけないってば!


 でも、見えないからこそ、思わず想像してしまう。