「……え?」
愛莉さんが、ビックリした顔で北澤くんを見上げる。
「っつーことで、オレら、チャレンジしてくっから」
「え、え、えぇっ⁉」
北澤くんが、愛莉さんの手を掴むと、もう片方の手をひらりと振ってずんずん歩きはじめた。
「ねえ、ちょっと大和、それってどういう意味⁉」
「はいはい。いーから、いーから。大丈夫だって」
取り乱した様子の愛莉さんを、北澤くんがなだめながら歩いていく。
「……ったく、人騒がせなヤツらだな」
南条くんが、苦笑いを浮かべて二人の背中を見送っている。
うん。なんだかうまくいきそうな予感。
「そうだ。俺らも試してみる?」
「へ⁉ いや、わたしたちは……」
本当のカレカノってわけでもないし、試すもなにも、ないと思うんだけど……。
「でも、南条くんがもし乗りたいのなら……お供します、よ?」
「よし、決まり。そうだ、アイツらの邪魔してやろうぜ」
南条くん、めちゃくちゃ悪い顔してる!
「ダメだよ。せっかくうまくいきそうなんだから」
「えー、つまんないのー」
そう言って、南条くんが口を尖らせる。
ふふっ。南条くんって、もっと大人っぽい人かと思っていたんだけど、コロコロ変わる表情も、子どもっぽい言動も、なんだかかわいい。