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「で、なにがあったわけ?」

 南条くんが、目の前に立つ愛莉さんと北澤くんを見て、深いため息をつく。


 南条くんが愛莉さんと北澤くんにメッセージを送って、園内にある遊園地ゾーンの入り口で待ち合わせしたんだけど。

 なんだか愛莉さんと北澤くんの間に、不穏な空気が流れている。

 お互い目を合わせようとすらしない。


「だって、大和がボートに乗るって言ってきかないんだもん」

 そう言って、愛莉さんがほっぺたを膨らます。

「え、乗ればいーじゃん」

「やだ!」

「なんで?」

「そ、それは…………だもん」

 さっきまでの勢いがウソのように、愛莉さんがモジモジしはじめる。

「は? なんて言ったんだよ。よく聞こえないんだけど」

 南条くんが、愛莉さんの口元に耳を寄せる。

「だからっ……カップルで乗ると、別れるってジンクスがあるから、乗りたくないの」

 顔をうつむかせ、かろうじて聞き取れるくらいの声でぼそぼそと言う。

 それを聞いた北澤くんが、ぷっと吹き出した。

「なあんだ、そんな理由かよ。ボートが転覆したら服が濡れるからイヤだとか、そういう理由かと思ったぜ」

「そんな理由って! 大和はどうせあたしのことなんかなんとも思ってないだろうけど、あたし……あたしは……」

 愛莉さんの目尻に、じわっと涙がにじむ。

「なに泣いてんだよ。そんな迷信みたいなもんで壊れるような仲だと思ってたわけ?」