勘違いしちゃいけない。これは、ウソカノを演じるという任務。

 それに、南条くんには、ずっと忘れられない初恋の女の子がいるんだ。

 だから、この行動に恋愛感情なんか一ミリも含まれていない。


 そう必死に自分に言い聞かせる。


 第一、わたしは依頼人に恋愛感情を持つことを許されていない。

 もしもそんなことがあったら、即破門だ。

 それだけは、あってはならない。

 だって、わたしが絶対に南条くんのことを守り切るんだって決めてるんだから。


「ねえ、おかーさん。らぶらぶなおにーちゃんたちがいるよ」

 幼稚園くらいの子かな? わたしたちの前に立った女の子が、瞳をキラキラさせて、わたしたちのことをじーっと見つめてくる。

「な、南条くん。やっぱり、もうおしまい!」

 片方の手でモルモットを押さえ、もう片方の手で南条くんの頭を押し返す。

「こらっ、お兄ちゃんたちの邪魔しないの」

 女の子のお母さんが、女の子の腕を引っ張っていく。

「えーっ。だって、らぶらぶはっぴーだよ?」


『ラブラブハッピー』の意味はよくわからないけど、なんだかすごく幸せそうな響き。


 南条くんと顔を見合わせると、同時にくすっと笑う。


「おしっ、ちょっと元気出た」

「ほんと?」

「ああ。そんじゃ、そろそろアイツらと合流するかー」