「ご、ごめんなさい! 南条くんを一人にするなんて、護衛失格だよね」

「今頃気づいたのかよ」

 慌てて救護所に飛び込んで、ふたたび南条くんの前で土下座すると、南条くんが苦笑いする。

「ま、アイツがいたから、問題ないよ」

「そ、そっか。そうだよね。あー、よかったぁ」

 胸に手を当て、ホッとなでおろす。


 あとで圭斗に叱られるのは不可避だけど、これはどう考えたって全面的にわたしが悪い。

 いくら南条くんの言葉に動揺したからだとしても、そんなのは言い訳にならない。

 とにかく、目を離した隙に南条くんに何事もなくて、本当によかった。


「それでね、さっきの話なんだけど……ごめんなさい! 実は、依頼人に恋をしてはいけないっていう掟があるの。だから、もし約束を守れなかったとしても、南条くんのホンモノの彼女にはなれない」

 一気にそう言い切ると、もう一度南条くんに向かって頭を下げる。

「ふうん。それって、掟があるから、なれないってこと?」

「ちがっ……そういう意味じゃなくて……」

 慌てて否定するわたしを見て、南条くんがフッと笑う。

「冗談」

「へ?」

「冗談に決まってるだろ。そうやって、ジタバタする詩乃が見たかっただけ」

「そ……そうだよね! ビックリしたぁ。だって、これはあくまでも南条くんを守りやすくするための、ウソの彼女役だもんね」

 ふぅーと胸をなでおろす。