「へー、すげーな。梅干しって、自分ちで漬けられるんだ」

「そっちは梅干しだったから、こっちのは、たぶんこんぶ。こっちのも、半分こしよ」

 ささっと毒味をすると、残り半分を南条くんに手渡す。

「うん。こっちもうまい。握りかげんが絶妙だな」

「そ、そう? ありがとう」


 ただのおにぎりだけど、南条くんがホメてくれたことがなんだかすごくうれしくて、緩んだ口元が戻らないよ。


 南条くんは、たまに自己中なとこもあるけど、ちゃんと周りの人への思いやりも忘れない人。

 こういうところも、愛莉さんが『誰よりもやさしい人』って言う理由なのかな。


「またいつか食いたいな、詩乃のおにぎり」

「いやいや、ただのおにぎりだし。別にわたしが作ったものじゃなくても」

「えー、ダメ?」


 そんな拗ねたような顔で、こっちを見ないで。

 拒否しきれなくなっちゃうよ。


「……別に、できなくはないけど」

「じゃあ、約束な」

 わたしが渋々そう言った途端、満面の笑みを浮かべて、小指を差し出す南条くん。

「ほら、詩乃も早く出せって」

 出し渋るわたしに向かって、小指をさらにぐいっと近づけてくる。

「わざわざそんなことしなくたって……」

「しなかったら、うやむやにするつもりだろ」


 ちっ。バレたか。


 南条くんの小指にそっと自分の小指を絡ませると、南条くんが上下に小さく振る。


「ゆびきりげんまん、ウソついたら……俺のホンモノの彼女になって」

「……⁉」